ブルーフィンパナクエ、改めブルーフィンカイザー?

2009/3/13

ブルーフィンパナクエの学名がBaryancistrus begginiになったようです。 プレコ王国のネタを探すために論文を探していたら偶然発見しました。 2009年2月に公開された論文のようです。

"A New Black Baryancistrus with Blue Sheen from the Upper Orinoco (Siluriformes: Loricariidae)", Nathan K. Lujan, Mariangeles Arce, Jonathan W.Armbruster, Copeia 2009(1):50-56. 2009

最初は全く新しい種類に関してだと思っていたのですが、掲載されている写真を見て「ブルーフィンパナクエ???」と思いました。


画像は論文より

読んで行くと以下のような文章があったので「ブルーフィンパナクエがBaryancistrusになったんだぁ」と思いました。

Baryancistrus beggini is locally known as ‘panaque azul’ or simply ‘panaque.’ In the global aquarium trade, it is referred to variously as L239, blue panaque, or blue-fin panaque.

以下、上記文章を翻訳してみました。 多少意訳気味です。

Baryancistrus begginiは世界的に取引されている観賞魚であり、「panaque azul (パナクエアズール)」か「panaque(パナクエ)」として知られている。 また、「L239」「ブルーパナクエ」「ブルーフィンパナクエ」と呼ばれる事も多い。

カイザーか?

今まで図鑑等ではブルーフィンパナクエは「Ancistrini sp」とされてきたので、大きく変わったと言えるのではないでしょうか。

今回は「背ビレとアブラビレがつながっている」などの特徴によってBaryancistrusとされたようです。

Baryancistrusと言えば、オフェンジフィンカイザーなど○○カイザーという名称のものが多いです。 最近ではレモンフィンプレコが新しくBaryancistrusに分類されたという話もありました。

学名から考えると、ブルーフィンパナクエではなくブルーフィンカイザーと呼んでも良いのかもしれないですね。

ただし、「It has therefore been tentatively concluded that the species is a Baryancistrus and is described herein」とあるので、「Baryancistrus(仮)」ぐらいの雰囲気のようです。 ということで、とりあえず、ここでは慣れ親しんだ通名の「ブルーフィンパナクエ」という名称を使います。

生態

ブルーフィンパナクエは巨大な花こう岩の割れ目や離れ岩で採取できたそうです。 捕獲した個体を解剖した結果、岩盤に付着する藻類やそれに付随する微笑動物を食べている事がわかったと記述されています。

生息地はあまり広く分布していないようです。 生息地域はオリノコ河の上流部、国はコロンビアとベネズエラのようです。


図は論文より

試験的に分類?

論文最初にも記述されていたのですが、論文の最後の方にも以下のような表現がありました。

The assignment of the new species to Baryancistrus must therefore be considered as tentative until such time as a more thorough comparative study of basal genera within the Panaque clade can be conducted and several currently undescribed species that might also belong within Baryancistrus can be examined.

Baryancistrusへの分類は試験的なものであり、今後パナクエに関しての研究が進むのを待つ必要があるとの事でした。 現在未分類の魚種でBaryancistrusへと分類できるものがあるかも知れないとも書かれています。

この論文著者に、ゴールデンブルーフィンとレモンフィンの論文を執筆された方々が含まれてます。 恐らく、そのグループの方々はBaryancistrusにある程度着目しているのだろうと推測しています。 次はどの魚種がBaryancistrusに分類されるのだろうと、ワクワクしてしまった今日この頃でした。

アカリエスピーニョの意味

2009/3/12

アカリエスピーニョマラジョー、ホワイトスポットアカリエスピーニョ、アカリエスピーニョダッタ、その他産地名が付いた様々な「アカリエスピーニョ」が流通しています。 産地名としては、例えばツクルイ、シングー、タパジョスなどが挙げられます。

これら、アカリエスピーニョの共通する特徴としては大型のPseudacanthicusで体表がトゲに覆われている事が挙げられます。

日本で流通しているプレコの多くは「キング」とか「ロイヤル」とか「ルビー」とか「マグナム」などの「意味がわかる」単語や、「パナクエ」や「ペコルティア」などの学名で構成される事が多いです。 それら「意味がわかる」名前と比べると「アカリエスピーニョ」という名前は意味不明です。

昔から、「アカリエスピーニョ」って何だろうか?と疑問に思っていましたが、最近謎が解けました。 「アマゾン河の食物誌 (醍醐麻沙夫)」という本を読んでいたら以下のような文章がありました。

アマゾン河の珍味アカリ(ヨロイナマズの一種)。 水底の藻や苔を食べる。 鮎と同じようにはらわたが特に美味。

アマゾンではプレコの事を「アカリ」と呼んでいるのか、と思ったのですが、言われてみればブラジル政府の各種公式文書にも学名に並んで「通名Acari」と書いてあるものが多いです。

そこで昔疑問に思っていた「アカリエスピーニョ」の語源を連想したのですが、問題は「エスピーニョ」とは何かです。 それっぽいポルトガル語を探して辞典をパラパラと見ていきました。 最初はesという単語とピーニョという単語2つで構成されていると予測してみましたが、それらしきものは発見できませんでした。 でも、恐らくesから始まる単語だろうとあたりをつけてesから始まる単語を探して行くと、「espinho」という単語がありました。 この「espinho」の意味を調べてみると「骨、トゲ」などの意味がある事がわかりました。

もう、そのまんまです。 結局、「アカリエスピーニョ」というのは「トゲトゲプレコ」という意味しか無いだろうと予想できます。 分類というよりも、現地ではある程度大きくてトゲがいっぱいあるプレコを全部「アカリエスピーニョ」と呼んでいるのだろうと推測できます。

ということで、流通している産地名+アカリエスピーニョというのは「○○産のトゲがあるプレコ」という意味ですね。 まあ、見ればわかるという結論ですが。。。

例外?ホワイトテールアカリエスピーニョ

ただ、不思議なのはホワイトテールアカリエスピーニョです。 他の「アカリスピーニョ」はPseudacanthicusですが、ホワイトテールアカリエスピーニョだけはPanaqueです。 しかも、Panaqueというだけあって体表がトゲトゲではありません。 実は何かの間違いで「アカリエスピーニョ」という名前がついているのではないかと疑ってしまいます。

名前を付けた方など、何かご存知な方がいらしたら是非教えて下さい!(笑)

他にも名前の不思議はある

他にもいくつか名前に関して不思議に思っているものがあります。 また、調べてみてわかったら書くかも知れません。